Research


機械システムの付加価値の追求

[静粛性の向上]

機械システムは、振動や騒音が問題となる場合がある。例えば、自動車のブレーキやクラッチでは機械要素の主要機能として利用している摩擦が原因となり振動現象が生じる場合がある。振動が機械性能に悪影響を与える場合もあるが、ユーザーに音として伝えることで、製品として品質を低下させることに繋がる懸念がある。本研究室では、摩擦によって励起された振動現象(摩擦振動)を抑制するために、新しい制振技術の研究開発に取り組んでいる。下図は、ブレーキを想定した実証試験である。回転軸に対して固定軸を偏心させることで、摩擦振動を抑制することができる。

制御実験装置

偏心なし        偏心あり

       


[燃費の向上]

環境問題やエネルギー問題を背景に機械システムの高効率化への要求は近年高まる一方である。特に自動車業界では、低燃費がわかりやすい商品価値として定着しており、各社が低燃費のための技術開発にしのぎを削っている。本研究室では、摩擦ロスを低減するための技術開発に貢献するために、光(波)の干渉を利用したナノメートル分解能で摩擦面を計測する技術の開発に取り組んでいる。本技術を用いることで、新しい潤滑油や摩擦材料による超低摩擦の実現を目指している。下図は、光干渉を利用した計測装置と潤滑油による潤滑膜の形成過程を示している。本技術を利用すれば、ナノメートルの膜厚の変化を検知することができ、潤滑油の機能を実証できる。

油膜厚さ計測装置

摩擦面の様子

 














新しい機械システムの創成

[振動発電]

一般に、「予期せぬ振動」は機械の仕事に対して悪影響をもたらす因子として排除される。しかし、本研究室では、振動現象のメカニズムを理解することで、振動を有効に利用した新しい機械システムの開発に取り組んでいる。例えば、風力発電がある。風力発電では、風車型の回転エネルギーを利用した発電が一般的であるが、大型であるために、高い風速のときにしか発電することができない。本研究室では、風によって励起される振動現象(ギャロッピング)を利用することで、小型・安価で低い風速でも発電可能な振動型発電システムの開発に取り組んでいる。振動発電は、発電量は小さいが、屋外の計器類の電源としての活用が期待されている。

振動発電モデル

実験結果

 


[音響冷凍機]

振動現象を利用した機械システムとして、音(空気の振動)を介して熱伝達をおこなう冷凍機(音響冷凍機)の研究開発に取り組んでいる。音響冷凍機は、工場で捨てられる熱などの低熱源で駆動でき、可動部を持たない単純な構造で、フロンなどの有害冷媒を用いずに稼働できる。本研究室では、原理確認のためにモデル装置を試作して、冷却性能を確認した。今後は、規模を拡大することで、更なる冷凍性能の向上を目指す。

熱音響冷凍モデル装置

冷却部温度変化図(t1:音発生時刻、t3:音終了時刻)